ポール・オースター『リヴァイアサン』

ウィスコンシンの道路脇で、製作中だった爆弾を暴発させ死んだ身元不明遺体として発見された友人(で元作家の)ベンジャミン・サックスについて、なぜどうやって彼がそこに至ったのかを、その友人であり作家のピーターが語ってゆく形ですすめられる物語。とはいえ内容は、サックスの物語にとどまらず、周囲をとりまく人々、妻や友人(ピーター)、友人の妻子や恋人、恋人の友人などなど、彼の死に繋がっていったと思われる人々の物語が次々と語られてゆく。

リヴァイアサン (新潮文庫)

リヴァイアサン (新潮文庫)

端から見るとサックスの人生は急速に下り坂を転がっているように思えるのだけれど、本人にしてみるとそうでもない、逆に生きる力が満ちあふれてきているかのように振る舞ってたりするのは、単なる強がりなのか、実際そうだからなのか、狂ってるのか、はっきりこう!とはわからなかったものの、本作もまた読んでいてしんどくなりました。
本筋とは関係無いのですが、この本にも「尾行」や「監視」が出てきて、作者は何かそれらにものすごい興味があるのかしらそれとも、J.アーヴィングさんの「熊」みたいなものなのかしら……と一頻り思案してみたりしました。