フランク・ホエーリー監督『グッバイ・ジョー』

1999年作品。どこかのあらすじ紹介で"乱暴者の父(ヴァル・キルマー)と息子(ノア・フレイス)の心の交流、ハート・ウォーミングな物語"的なことが書いてあったのを鵜呑みにして鑑賞したらば、実際にわたしのこころに流れ込んできたのはあたたかいものというよりはもっぱら、登場人物たちから伝わってくる、ままならない自分の人生に対する憤りやら哀しさやらせつなさばかりで、ああわたしは何故金を払ってまでこんな暗い気持ちになっているのだろうと軽くうなだれた。
でも作品自体は全然退屈なものではないし、本当にこういう人たちっていたんだろうな(衣装や髪型から察するに'60〜'70年代の物語な気がする)と感じさせるリアルなものがあって、だから余計にわたしの気持ちは沈みこんだのかもしれない。

グッバイ・ジョー [DVD]

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主人公が万引きしてきたチョコ菓子を頬張っているところに、近くで遊んでいた子供たちがわらわらと集まってくるというシーンがあって、彼らはその菓子をものすごくわけて欲しそうな顔をして彼を囲む。そのときの顔がなんともたまらない。最初は追い払おうとした主人公も折れて、しまいには全員にそれをひとつずつ分け与えるんだけれど、その子供たちの身なりや腹ぺこ顔をみて、ああここは低所得者が多く住む地域なのだなと気付いた。
この物語では主人公一家が描かれたけれど、ここら辺の人たちはみんな似たような紆余曲折を経て、這い上がるかそのまま底辺で暮らし続けたかしたんだろうな……と必要ないところまで想像して余計気落ちしたのは自分の所為。
そういえばわたしの気になる人、ジョン・レグイザモさんが主人公のバイト先の同僚役で出演していた。十代前半の少年に女子の割れ目の話をしてしまう、優しいけれどちょっと悪いお兄さん役。この人を観るとやっぱりなごむ。