見えないけれど、そこにあるモノ。

同時期に読んだり観たりした関係なさそうな(それも恐怖にまつわる)ものどもの間に、偶然の共通点を見出したりすると、ちょっと怖くなったりする。この一冊と一本もそういうものどもだったわけで、必要以上の恐怖感を味わう事ができた。うれしくない。

みんな行ってしまう (創元SF文庫)

みんな行ってしまう (創元SF文庫)

M.M.スミスのSFホラー短編集。この人の本は長編の『スペアーズ』を読んだ事があって、とんでもない展開ながら楽しめた記憶があったので、期待して読んだ。人物の心理描写には身に迫ってくるものが多くて、読みながら切なくなったり、ぞーっとしたり。特によかったのは、表題作と、「猫を描いた男」で、どちらもじんわり系。ただ、この作家さんはものによってはものすごく、描く対象(主人公など)を突き放してしまうときがあって、なんだか愛と救いが不足してるなあ……と感じた。けど、ホラーなんだから仕方ないのかも。
問題の作品は「地獄はみずから大きくなった」で、近未来を舞台に若き科学者が始めたある研究をきっかけに世界が変わってゆくお話。目には見えないけれど、じわじわと広がってゆく怖さ。
1.0〔ワン・ポイント・オー〕 [DVD]

1.0〔ワン・ポイント・オー〕 [DVD]

J.レンフロ、M.トーソン監督による'04年作品。この映画は主人公のサイモン青年が夜型人間の所為もあって、ほとんどが夜のシーンばかりなうえに、古くて重厚な作りのアパート内部がこれまたなんともどんよりとした雰囲気で、観ているこちらまで陰鬱な気持ちになってしまった。
近未来、古いアパートに住むサイモンら住民たちのもとに、何度となく届けられるようになった中身が空っぽの小包。手にした人たちは皆、少しずつ何かが変わってゆくのにも気づかずに、次々と命を落としてゆく……というようなお話で、これまた空っぽの小包の中の、目に見えない何かが物語のキモになっている。

近い未来と書いて近未来なわけで、もしかすると現実になり得るかもしれないんだなあ。……などと想像したらげんなりするような、そんな作品どもでありました。目に見えない敵っつーのは、厄介このうえないもの。あと関係ないけど、目に見えない敵というとまず第一に、プレデターを思い出す病をいい加減治したい。