読んだ。

物語の舞台となる警察署(D分署)には、目覚しい活躍をする警察官も悪徳警官もいない。いたってまともな感じの警察署なのだけれども、その敷地内のガレージにはちっともまともじゃない謎の自動車が保管され続けている。その車にまつわる出来事を、D分署の警官だった父親を突然失ってしまった少年に、署員たちが語り聞かせてゆく形式で物語は進む。
ネッドは(若い頃の)マット・デイモン、サンディはモーガン・フリーマン、シャーリーはドリー・パートンを思い浮かべつつ読了。サンディ(現署長)がモーガンさんというのは若干無理があるような気も……んが、優しい目をした年長者というとこの人が自動的に配役されてしまうのですわたしのお脳は。

回想のビュイック8〈下〉 (新潮文庫)

回想のビュイック8〈下〉 (新潮文庫)

読む前には、恐怖感てんこ盛りの、思わず絶叫しちゃうような物語なのではないかと予想したのだけれども、実際にはなんというか、ほんわかした感じの、縁側で老人が若者に対して懇々と、こんなことがあってね、それでね……というような雰囲気の物語だった。
途中、語り手(サンディ)が彼の物語方法を拒むような態度を示す聞き手(ネッド)にキレかける場面があり、それはたぶん二人の年齢の差や、だからこその物事の捉え方の違いから生じるんだけど、ものすごく真に迫っていて、こういうことあるよなあ、あるあるなんて思いながらなぜか笑ってしまった。んでもって「俺の、俺の、俺の話を聞けえ〜♪」と脳内に勝手にBGMが流れ出して、さらに笑った。